【大学病院~さとう歯科医院】泣ける男
大学病院時代から、スタッフ、患者さんともに女性が多い。
必然的にというか、だんだんカンが良くなっていった。目の大きな女性はわかりやすい。目に、内部情報が豊富にある。お肌の調子、服装にも出てくる。
また、音にも敏感になる。世の中の男性諸氏、奥さまの台所の洗い物の音をちゃんときいていますか?
特に大学病院時代は周囲も独身の方が多く、診療後に声をかけた。
「ケーキセットでお茶しない?」
最初はとりとめもない話をしていても、何かあれば、話がそちらに向かっていく。問題の多くは交際相手のこと。
当時はまだ占いも知らず、また私の若い未熟さも重なって話が長くなることが多かった。
・・・
Aさん「彼は私のことどう思ってるの?」
Bさん「二股かけていたなんて信じられない!」
Cさん「彼とケンカしちゃった、どうしよう?」
Dさん「彼の奥さんが出てきちゃった」
Eさん「このままじゃ耐えられない!」
Fさん「私は彼を理解しようとつとめているのにどうしてわかってもらえないの?」
・・・
ほとんどの女性は公衆の面前ではおさえている。ただ、おさえきれない瞬間は突然やってきた。
夜の大学外来・医局、近所の駅前、渋谷ハチ公前の交差点・・・
―――ドラマのワンシーンのように。
「先生、ゴメンなさい。先生が悪いワケじゃないのに・・・。」
23年間もラグビーでスクラムを組んでいた私の胸は、泣くには調度良い厚さだったのかもしれない。知らない人が見たら、私は大悪人。けれどそれを受け止めているから今日があると思う。
また、世の中一方的ということはありえないとだんだんわかってきた。
「タツヤ君、あなたの知らない所で泣いている子がいるかもね・・・」
年上の女性にそう声をかけられたことも耳が痛い。年々気づかないフリもうまくなってきたようだ。どこかの男性に私のことでご迷惑をおかけしたこともあるだろう。
One for all. All for one
でいきましょうか! ダメですかね?