【大学病院】彼を助けて!
今日も診療室でモデルの女の子が彼氏の話に夢中になっていた。
「Mはね、カートのドライバーでね。腕はいいんだけどお金がないから、優勝できないんだ。ジャニーズのAなんかどうせ道楽のくせにいいマシンでさ...。」
「Mはね、友達の車が故障したからって、自分の車の部品を外して貸してあげちゃうんだよ。
自分がレースに出れないじゃん!」
「でも、君はそんな彼が好きなんだよね。」
彼女は大きくうなづいた。
そんなある日...。
「Mが歯が痛いんだって。でも歯医者なんか行きたくないって言ってるの。どうしよう? 先生助けて!」
私は小さなメモ用紙にコメントを記入して彼女に渡した。
「これを彼に渡してごらん。君が言うような人だったら必ず私に会いに来るから。」
「本当? こんなメモぐらいでMが歯医者になんか来るの?」
彼はすぐにやって来た。
「あんなこと言われちゃ、来ない訳にいきません。覚悟してますからよろしくお願いします。」
立派な体格の男は痛みに弱い。
治療イスの上でも体がこわばっている。私はいつものように緊張を和らげるような会話をしながら痛みのない麻酔をした。
驚く彼を尻目に痛みもなく手際よく初回の治療を終えた。
彼の目に感動の文字が光っている。
数回の治療でスッカリ信頼関係を結んだ彼が言った。
「あいつ(モデルの女の子)色々問題ありますけど、根はいい女なんでこれからも守ってやってください。お願いします。」
やれやれ、俺は男にはいつも強いんだよね...。