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2011年12月 9日

これは私の直接の仕事の話ではない。
教授診療チームの後輩歯科医師から聞いた話である。

彼は優秀であるばかりでなく、その心配りたるや達人の域だった。その後輩歯科医師なくして私は大学で無事診療を終えられなかったと思う。動力担当部署に教授診療であることを電話すれば夜8:30頃まで動力が使えること、それ以降は訪問診療セットを準備すること、技工部との連携、歯科衛生士への根回し、後片付け、すべて彼が教えてくれ、先頭に立って実行してくれた。なおかつ上層部の私への評価をさりげなく伝えてくれ、「まだまだ攻めの診療ができる」と教え、励ましてくれた。本当にありがとうございました。

話を診療に戻す。患者さんは車イスに乗って奥さまとともに外来にいらした。もはや治る見込みのないところまできており、口から食事をとれる状態ではなかった。
それでも総義歯を作ってほしいという。

「主人は来週予約しても、もう来院できないかもしれません。それでも主人の最後の願いを聞いてやってほしいのです。」
後輩歯科医は状況を察し、診療後に自分で義歯を作っていた。超特急で作った義歯を入れた患者さんは
「どこも痛いところはありません。鏡を見せてください。」
と言った。
それがお会いした最後だったという。

「佐藤先生、あとでわかったんですけど、あの人は有名な軍人さんだったんですよ。奥さまから手紙が届きました。」

先日はご丁寧な診療、ありがとうございます。
主人は帰宅すると私に昔の軍服を出すように命じました。
それを着て鏡の前で、なんと立ち上がり白い帽子もかぶり、満足の笑みを浮かべておりました。
本当にお世話になりました。

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さとう歯科医院 院長 佐藤達也

さとう歯科医院
http://www.satou-client.jp/
院長 佐藤達也

【ブログの主旨】

「診療雑感」は、私が過去にどのようなことを感じ、どんな診療を行っていたかをまとめたものです。症例写真だけでは技術をお見せすることはできませんが、文章なら私の人間性を語ることができます。 なじみの患者さんが言っていた、「何かあったら、(佐藤)院長が出てきてくれるんだから、俺は今の先生を信頼してお任せしていますよ。」とは、ありがたいひと言である。


【経歴】

1988年 東京医科歯科大学卒業

1988年~1990年 東京医科歯科大学研修医修了(2期生)

1990年~1998年頃 東京医科歯科大学・障害者歯科学講座・顎口腔機能治療部において、大山喬史教授(当時の病院長、現在学長)の指導のもと、教授診療助手のチームリーダーとして、難易度の高い義歯や著名人・芸能人の審美歯科治療を担当。

1991年~1998年頃 障害者歯科学講座・障害者歯科治療部において、有病者の歯科治療。

1992年6月 大田区東雪谷にて開業。

2004年9月 現在住所(隣)に移転。