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2011年12月 8日

そのご婦人は、ご主人に連れられて来院した。
以前、私がご主人の義歯を作っており、常々「女房の体調が良くなったら連れてきますから。」
と言っておられた。
ご病気の為か、あまり表情がなく、また長時間口を開けたり、座っているのは困難な状態であった。技術的なことは経験から何とでもできる。大学病院障害者歯科では脳梗塞や心筋梗塞のあった方の心拍、血圧、脈の乱れ、血中酸素飽和度等をモニターしながら(医科歯科大学でさえ麻酔医がつく余力がないので)横目と耳を使って診療していたのだ。

問題は心だった。なんとか、少しでも癒して差し上げられないものか?
わずかな会話の中にヒントがあった。
「先生、サユリチャンてかわいらしいわよねえ?」
この方にとってのサユリチャン?
「吉永さん?ですか?」
「そうよ。口元がウサギチャンみたいでかわいらしいと思わない?」
これだ!吉永小百合さんの笑っている写真をさがした。少なくとも最近は歯の見える写真はない。

後日、ロウ義歯試適(洋服の仮縫いのようなもの)の際、私は技工士の並べた歯を少し手直しした。若い頃の吉永小百合のような歯並びを作ってみたのだ。
「いかがでしょうか?」
私は手鏡を差し出した。
彼女の目に光がともった。
「あら、まあ!」
「あなた見て、どうかしら。」
「おお、おお、似合うよ。とても綺麗だよ。」

わずかばかりのお手伝いができたかもしれない。

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さとう歯科医院 院長 佐藤達也

さとう歯科医院
http://www.satou-client.jp/
院長 佐藤達也

【ブログの主旨】

「診療雑感」は、私が過去にどのようなことを感じ、どんな診療を行っていたかをまとめたものです。症例写真だけでは技術をお見せすることはできませんが、文章なら私の人間性を語ることができます。 なじみの患者さんが言っていた、「何かあったら、(佐藤)院長が出てきてくれるんだから、俺は今の先生を信頼してお任せしていますよ。」とは、ありがたいひと言である。


【経歴】

1988年 東京医科歯科大学卒業

1988年~1990年 東京医科歯科大学研修医修了(2期生)

1990年~1998年頃 東京医科歯科大学・障害者歯科学講座・顎口腔機能治療部において、大山喬史教授(当時の病院長、現在学長)の指導のもと、教授診療助手のチームリーダーとして、難易度の高い義歯や著名人・芸能人の審美歯科治療を担当。

1991年~1998年頃 障害者歯科学講座・障害者歯科治療部において、有病者の歯科治療。

1992年6月 大田区東雪谷にて開業。

2004年9月 現在住所(隣)に移転。